2008/4/25 千葉県富浦湾の日の出ボートで二馬力船外機のマゴチ釣り
マゴチをやっぱり釣りたい
古い話で恐縮ですが、このサイトがオープンしたとき、最初に書いた話がマゴチを釣りにいくっていうネタだったんですよ。懐かしいですね。
で、それ以来何度となくマゴチを狙って竿を出しているのですが、これが見事なまでに釣れない。一匹も釣れない。アカエイやサメだったら釣れるのに。最近では友人から「きっとマゴチを釣ったら死ぬ体質だから、釣らない方がいいよ」なんていわれる始末。マージャンでいう天和だか九連宝灯みたいだ。
そんな訳で、「マゴチが釣れない人」として名高い私ですが、今年こそは一匹釣りたい訳ですよ。70センチオーバーのやつ。68センチでもいいけどさー。
で、どうすれば釣れるかいろいろと考えたところ、ようやく誰も思いつかないであろうという方法にたどりついた。
「うまい人に教わる」
はい、誰でも思いつく話ですね。でもいつも釣りに関しては、「楽な方、楽しい方、癒される方」を優先するような友人としかいかないので、「うまい人に教わる」というのは、私の中では一大事な訳ですよ。
そんなわけで、私にとっては知り合いの友人の知り合いの同郷くらいの関係にある(ようするにほとんど知らない人)、ヨネさんという初対面のマゴチマニアの方と釣りに行ってきました。
狙うはもちろんランカーサイズのアカエイ!
いや、マゴチです。
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車で迎えに来ていただきました。エンブレムがあれだあれ。 |
今回いく場所は、館山自動車道が開通していきやすくなった富浦。やはり人生発のマゴチは富浦でしょう。
途中のコンビニで仕入れたお弁当は、今日ももちろんナイススティックだ。
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春のパン祭り開催中。 |
日の出ボートで二馬力船を借りる
今日のボート屋さんは、富浦湾では珍しく二馬力ボートを置いている日の出ボート。本日のテーマは、曳舟に頼った受けの釣りではなく、二馬力船でポイントを自ら探す攻めの釣りなのだ。
ちなみにヨネさんは逗子がホームなので富浦ではマゴチを釣ったことがない。「初めての場所で釣る一匹っていうのが、なかなかいいんだよ」という大人の楽しみ方で富浦にしたそうだが、「人生発の一匹っていうのが、なかなか釣れないんだよ」と、心の中でレベルの違いをかみしめておく。
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懐かしの日の出ボート。 |
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日の出ボートの店員さんが懐かしい! |
天気はどんより。二馬力エンジン船に乗って、濁りまくった富浦の海へ出発だ。
さて私は小型船舶免許を持っているけれど、しなくていいのなら操船はしない派なので、今日は同行のヨネさんも小型船舶免許を持っているので、迷うことなく運転しない。というか二馬力ボートは免許いらないんだけど。
手漕ぎボートの釣りは好きだが、ボートを漕ぐのは好きじゃない。
エンジン付きの船も好きだが、操船するのは好きじゃない。
肉肉野菜肉野菜。
野菜野菜野菜肉肉野菜野菜。
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船って、全部運転方法が違うから嫌い。 |
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様子を見にきた船長。手漕ぎの場合はこの船でポイントまで引っ張ってくれるよ。 |
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ゴムボートって憧れるけれどやっぱり怖いっす。 |
魚群探知機登場
今日は曳舟ではないので、自分でポイントを探しての釣りになるのだが、そこで必要になるのが魚群探知機。もちろんヨネさんが使うのは私が持っているおもちゃみたいなものではなくて、ちゃんと底の様子が見られるもの。魚探とにらめっこをしながら地形を確認し、風向き、波の向きを考えて、一番いい流すラインを探し当てる。
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この工程が大切だそうですよ。 |
私が普段やっているボート釣りだと、ポイント選びは運と勘。適当な場所で適当にアンカーおろして、適当に流された場所でやるのだが、よく考えればそのやりかたは運があって勘のいい人がやってこそだよなと、こういう真面目なポイント選びを目の当たりにすると思うわけですよ。自分は運がよくて勘がいいかというと、残念ながらそうじゃない。
だからって次回までに魚探を買って真面目にポイントを探すかというと、人は人、我は我っていう話なのですが。そこはほら、向き、不向きっていうやつでして。
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魚の反応よりも、底の様子がわかることが大切らしいですよ。 |
移動時間を含めて30分ほど船を走らせ、ようやく釣り始めるポイントを決定。ちゃんとしたマゴチ釣りはアンカーを入れない流し釣りなので、船に備え付けのシーアンカーを海に放つ。
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でっかい風呂敷じゃないですよ。 |
この日の出ボート特製シーアンカー、あきらかに素材が傘なところがゆるくていい。
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クラゲの散歩じゃないですよ。 |
今日のスペシャル餌
さてボートでのマゴチ釣りというと、まずはシロギスやメゴチを釣るか、場所によっては生きいわしを購入して、それを生き餌にするのが今までのやり方だったのだが、マゴチマニアのヨネさんは違う。
まず朝に築地へ寄って、場内市場でサイマキというクルマエビの小さいやつを生きたまま買い、ブクブクで活かしてボートに持ち込んできたのだ。
これさえあれば餌を釣る必要がないのでマゴチ釣りに集中できるし、この餌が経験的にアタリが一番多いらしい。なるほど確かにこれなら私でも釣れる気がする。
「小学生の頃に進研ゼミをやっていたら…」というのと同じくらいに、「この餌を前から使っていたら…」という期待感を持たせてくれる贅沢な餌である。ちなみにこの量で2000円〜3000円だそうです。
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餌がクルマエビって、どんだけ贅沢な釣りですか。 |
用意した竿は6:4調子のの1.8メートル。小型両軸にPE1号巻いてフロロ5号のリーダー付けて、仕掛けは15号の鋳込み天秤。これ釣りしない人だと意味分かんない暗号ですね。
ハリスはヒトヒロくらいで、エビエサの場合は専用の針を使い、チモトに糸おもりを巻くと海中でエビが安定するそうです。でもそんな道具はもちろん持っていないので、ハリスから先はヨネさんがご用意いただいたものをお借りします。
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この針がマゴチの上あごにガツンとかかるわけですよ。 |
ついでに釣り方のレクチャーも受ける。マゴチのアタリがあってから合わせるまでの流れをシミュレート。
いつもはキス釣りなどをしながら置き竿にしておいて、竿がなんかガクガクいっていたら合わせるという、技術もへったくれもない釣り方なのだが、今日は手持ち竿でマゴチのみをストイックに狙うのだ。
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「ぐっと竿先が曲がったら、ちょっと竿を下げて!」とかなんとか。 |
餌の付け方は、目の間にある角を折って、針先を口から真上に指して、針先が出るかでないかくらいにすると、バランスがいい状態で元気に泳いでくれるらしい。これがなかなかむずかしいんだけどね。
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口がどこかよくわかりませんでした。 |
で、これをわたしがやると、針を刺しすぎてエビがすぐにぐったりするわけです。
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ごめん、エビ。 |
アタリが多い
エサもどうにかつけたところで、仕掛けを海底まで沈め、ハリス分くらい巻き上げる。あとはたまに竿を上下に動かして、誘いをかけながらあたりを待つ。もちろん今日はストイックな釣りなので手持ちでね。でもそれだけだとせっかくの自由なボート釣りがもったいないので、置き竿で同じ仕掛けをもう一本。
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これで釣れなかったら、本当にマゴチと縁がないんだと思うんだ。 |
こういう大物釣りは、一日やってあたりは数回。最後まで集中力が持つかなーと始めたのだが、さすがヨネさんが時間をかけて選んだ場所に生きエビ餌。なんと一発目から当たりがきた。
竿先がクンークンーっと引っ張られる。これがマゴチの前あたりというやつだろうか。しょっぱなからドキドキだ。
これでいきなり釣れたら今までの釣りは本当になんだったんだと思いながら本アタリをじっくり待つが、どうもググッとはきてくれない。その代りにビューンビューンと引っ張られる。これ、魚っぽくないなあと、頭の中にハテナマークがいっぱい浮かぶ。
「これは…イカだね。ゆっくり巻いてみて。」
なるほどヨネさん、おれも今そう言おうと思ったんですよ(強がり)。まあイカでもいーかとシャレにもならないレベルの感想がでる。
ゴミが引っかかったような重さを感じながらリールを巻くと、水面下にナイスサイズのコウイカが見えた。これで夕飯はイカスミパスタにイカ刺しだと喜びながらイカを寄せるも、使っている竿が短くて寄せずらい。というか腕が悪くて寄せきれない。
アーワーギャーとパニクったところで、ヨネさんが構えていた網の射程距離から50センチ先でイカは餌を放して逃げていった。
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食い逃げされたー。 |
「ちょっと焦りすぎたね」といわれてなにも返す言葉なし。
しかし今のでなんとなくイカの攻略法はわかった気がする。というかマゴチを釣りに来たのでイカはまあどうでもいいのだ。でもイカ食べたいし。
餌を付け替えて再チャレンジ。
するとしばらくしてまた同じような当たりがあり、同じように巻き上げて、同じように逃げられた…。
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いやーーーーーーー! |
で、二度あることは三度あると。
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また逃げられたーーーーー。 |
イカなんか大嫌いだ。
これだけ餌をイカに齧られたら、いつもだったらエギを投げたり、エビにイカリ針をつけたり、モリを持って潜ったりして、どうにかイカを釣ってやろうととなるのだが、今日はあくまでマゴチ狙いなので我慢我慢。ストイックな釣りっていうのもなかなか楽じゃないですね。
そして待望の一匹!
腹の立つイカを避けるためにポイントを変えたりなんだりしているうちに、今まで私のマゴチを寄せ付けない負のオーラによって邪魔されていたヨネさんに待望の当たりがきた。
ヒョコヒョコいっている竿先を睨みつつ、本アタリがきたところで、体全体を使った大きく合わせる。
噂に聞く中村屋というラーメン屋の「天空落とし」という麺の湯きりくらいにダイナミックな合わせだ。いや、今動画で確認したら全然違った。まあいいや。
そんな感じでがっちりとマゴチの硬い口にフッキングをさせ、見事に幻の(私にとっては)マゴチを釣り上げた。
そうか、マゴチって本当に実在する魚なんですね。
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実際にマゴチが釣れるところを初めて見た。 |
魚屋以外でマゴチって初めてみるけど、やっぱりかっこいいですね。さすが私が数年追い続けているだけの魚である。そういえば知り合いが初めてのマゴチ乗合船で七匹釣ったとかいっていたが、そういう話は置いておいて、どうにかして釣ってやりたい魚だと改めておもう。
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次こそは私でしょう。 |
GPSという秘密兵器
ボートでの流し釣りのいいところは、広い範囲を探れることなのだが、欠点はどこで釣れたのかがよくわからないこと。きっちり山ダテをすれば場所を特定できるのだが、なかなかそうもいかないわけで、さっき釣れたあの場所にもう一回いきたい!というのが難しい。
そんな悩みを解決するのがヨネさん持参のこの道具。パララパッパラー、ハンディGPS。
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噂にはよく聞くけれど、本当に持っている人って初めて見た。 |
正直これがどういうものなのかいまいち把握していないのだが、これで釣れた場所を記録しておくと、ボートが流されたあとも、同じ場所に戻ることが容易にできるらしい。
そして「ここぞ」というポイントを逃さず流すことで、はい二匹目ー。
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また釣られたー。 |
私がイカのあたりすらなくなった中、ヨネさんは余裕の二匹目ゲットである。
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まあ贅沢ないけすだこと。 |
マゴチを二匹釣ったものだけが持つ余裕ということで、ヨネさんはシロギス釣りを開始。
ちょちょっと投げて、ちょちょっとキスやらカワハギやらを釣り上げる。釣りがうまい人はなにを釣らせてもうまい。
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この時期は肝より身がうまいよね。 |
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シロギスも釣ると楽しいよね。 |
そのあいだ、まだ一匹も釣っていない私はストイックにマゴチ一本槍で頑張ったのだが、結局その後はアタリなし。久しぶりの完全坊主で終了となった。
なーんにも釣れなかった!
今日の夕飯は、おかずなし!
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帰りは曳舟で引っ張ってもらいました。 |
もったいないのでエビを食う
頭がぽーっとした状態で、ボートは岸へと運ばれていく。ああ悔しい。
いけすを見れば、ヨネさんの釣ったマゴチが二匹。そしてエサのエビが20匹ほど残っている。
なんでこんないい餌があってマゴチが釣れないんだー(いや、ヨネさんは二匹釣ったんだけどさー)。
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こんなにいい餌でなぜ釣れない。 |
魚釣りのエサとはいえ、築地で仕入れた活クルマエビ。
海に逃がすのはもったいないので、船の上で殻をむき、海水で洗ってそのまま食べてやる。
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ひげが濃いのが釣れない理由では。 |
小さいとはいえ、さすがは生きたクルマエビ。身に甘味があって、ぷりっぷりとして大変うまい。マゴチが食わなかったような餌な訳だが。
このエビがしょっぱいのは、涙のせいじゃなくて、海水の味。
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ずいぶん遠浅ですね。 |
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ヨネさんにはちょっと物足りないサイズだったみたいです。 |
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ほらほら、目がハート。 |
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口がでかいね。俺の針も飲み込めばいいのに。 |
マゴチをもらってしまった
さて釣りの帰り際、ヨネさんが釣ったマゴチを一匹私にくれるという。だが私は「自分で釣った魚以外は持って帰らない」という主義、でははまったくないので、ありがたくいただく。ついでにシロギスと餌のクルマエビもいっぱいいただいた。
これで夕飯のおかずはばっちりなのだが、こうなるとイカを3連発で逃したがさらに悔しい。イカも食いたかったなー。
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とりあえずマゴチは刺身にしてみました。さっぱりもっちり。なるほどクルマエビを餌にする価値がある魚ですわ。一生涯追いかけてやる。 |
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えびはもちろん天ぷらに。今まで食べたエビ天の中でベスト。釣りは関係なく、今度活けのクルマエビを買ってきてまた作りたくなるクオリティ。 |
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ついでにマゴチもあげてみたが、これまたふっくらしてうまい。 |
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マッシュルームとニンニクとクルマエビをオリーブオイルで煮てみた。フランスパンに最適。 |
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えびの頭も二度揚げにしてバリバリ食う。 |
そして次の日も魚三昧。
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揚げたえびの頭を砕いてペペロンチーノにプラスしたパスタ。 |
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マゴチのアラとシロギスの一夜干し。 |
和と洋の混ざり方がむちゃくちゃな献立ですね。
ということで、マゴチマニアの先生、築地で仕入れた生きたエビ餌、魚探とGPSによる的確なポイント、二馬力船の機動力。これらの今考えられる最高の条件を満たした上での敗北。この意味は非常に大きい。ようするに俺の腕が悪いと。
しかしあれだ、このお金さえ出せば何でも手に入れることができる現代社会において、「喜びを溜める」ということは、非常に貴重なことなのではないだろうか。マゴチが釣れないことで、喜びを溜めることができるのならばいいじゃない。なんかドラえもんの道具みたいだけど。
きっと今後も釣りに行くたびに喜びを溜め続けて、そして本当にマゴチが釣れた時に嬉しくて嬉しくて…死ぬ。やっぱり私はマゴチを釣ると死ぬらしいが、まあそれはそれでしょうがないので、いや死なないように努力しつつ、今後もマゴチを追いかけたいと思う次第でございます。