8/7(日)富士山登山富士登山 さようならと君にいう

 

 

這々の体でどうにかこうにか下山後、200円も出して買ったペットボトルの「激流」を一気に飲み干そうとして景気よくむせ返る。胃が受け付けなかった。どうやら思ったより体が弱っているらしく、一回座ると腰が痛くて立ち上がれなくなる。たぶん富士山には登頂すると向こう一週間は肉体年齢が20歳加算される不思議なご利益があるらしい。そんなご利益はいらないのだが。

馬。 7合目から5合目まで12,000円。ううん。

とりあえず、土産物屋を冷やかしたらさっさと風呂にでも入りましょうと、河口湖駅に戻るバスの出発ギリギリに滑り込む。ああ、すんげえ座りたいのにイスが三つ足りない。女性二人と高山病のF施さんに座ってもらい、N谷さん、T羽君、私はバスの後ろの方でおとなしく立ち乗り。普通の路線バスなので助手席なんかないぜ。くそう、富士山からの生還直後にバスの中で立ってられるかと降車口の階段状になっているところに座り込んだら下にマグマ、じゃなかったエンジンがあるらしくケツが熱くて座ってられない。二人は平気で座っているが、私はお尻が熱くなるのは便座の保温機能も含めて好きじゃないので、富士山の急勾配を下るバスの中、一人ぽつんと立たされ坊主。これは私が選んだ道なのですが、なんか心が荒んできた。立ち乗りをやめて箱乗りでもしようかな。路線バスで。まあそんな元気は当然ない訳だが。ああ、立ったまま寝そう。でもきっと、ほら、疲れれば疲れるほどきっとこの後の温泉は気持ちいいはずだと自分をおざなりに励まして人生を耐える。

お土産。甘くてビックリした。 さすがに疲れたらしい。

どうにか立ったまま寝る前に河口湖駅に到着し、N谷さん達が去年もお世話になったという「溶岩温泉」という聞くからに熱そうな旅館の温泉にいくことに。あ、旅館の名前が溶岩温泉なんです。わかりにくいですが。ここは電話をすると駅まで迎えにきてくれるのでラクチン。ところで、河口湖駅のゴミ箱に焼き印までしてある金剛杖が大量に捨ててあってかなり微妙。確かに下山した途端に無用の長物になるのは目に見えているけれどねえ。特に海外から来た人は、コレ持って飛行機に乗る訳にもいかないだろうし。我々一行は登山用の杖を持ってきたS藤さんと、おじいちゃん用の杖を持ってきた私以外は当然マイ金剛杖をお持ち帰り。きっと来年も使うことになるんだろう、みんながんばってくださいね(他人事)。そのうち焼き印を押す場所がないくらいに使い込まれた金剛杖になるはずだ。なったところでどうなるというものでもないけれど、ねえ。

そんな訳で電話してから五分で来た迎えの車に乗って、硫黄溢れマグマ煮えたぎる溶岩温泉(大胆予想)へ。おお、いい感じに寂れていて素敵だ。

お迎え到着。 到着。風呂。

傘立てにさりげなく金剛杖。

埃まみれの体で一人1000円支払い、扇風機がクルクル廻る昭和の香りがプンプンする休憩所へ。一通りグダグダとした後、お待ちかねの溶岩風呂へ。垢と富士山の埃を石鹸で流して、りんごジュースみたいに濁ったお湯へ。この体力状態で熱い風呂だったらちょっとなあと思ったら、溶岩風呂の名に反してすっごいぬるい風呂で助かる。肩までどっぶりと浸かって足を揉みほぐしながらポヤーン。ああ極楽極楽ってどうやら富士山は精神年齢は50歳加算されてしまうらしい。でもいい。気持ちいいから。

風呂でポヤーンとした後、水で濡らしたタオルをオデコに当てて、畳の休憩所で大の字になる。うーん、ここにこれ以上いたら間違いなく寝る。全員寝る。そして明日まで起きない。いかんいかん、明日という日が東京やら山形やらで僕たちの帰りを待っている。そろそろ飯を食って東京とか山形に帰りましょう。F施さん曰く、「富士山の帰りにはほうとうを食べる決まり!」らしいので、河口湖駅まで車で送ってもらい、すぐ駅前にある「ほうとう不動」という放蕩なのに不動なお店へ。あれ、ほうとうって山梨の名物じゃなかったっけ?あ、ここ山梨か。富士山っていうからずーっと静岡だと勘違いしていた。うん、内緒にしておこう。ところであの「富士そば」っていう看板。あれって「富士という蕎麦屋」か「富士山の側」のどっちだろうねえ。樹海のような深い謎だねえ。あ、どっちでもいいですか。

富士そば。深いね。

風呂上がりのさっぱりした体でほうとう屋へ意気揚々と入店し、もちろん全員でほうとうを注文(一人いなり寿司付き)。F施さんの高山病はもうすっかりいいらしい。アツアツの鉄鍋に入ったアッツアッツの極太ウドンをすすりながら、ついさっきのはずなのに、すでに遠い思い出になってしまった富士登山の話をアチアチいいながら楽しくとする。高山病の辛さとか下山道の虚しさなどの都合の悪い記憶は溶岩風呂で垢と一緒に溶け流れてしまったらしい。さすが溶岩、何でも溶かすぜ。えい、ビール飲んじゃえ。

ほうとう不動。 ほうとう。カボチャがいっぱい。

さあ、もう一杯ビールを呑みたいところだけれど、名残惜しいがもう帰りのバスの時間が来てしまった。新宿とか現実とかへ向かうバスに乗り混むみんなをバス停から見送る。

N谷さん、素敵な旅を企画してくれてありがとう。
F施さん、体調が悪い中いろいろと気を使っていただきありがとう。
S藤さん、あなたがあんなに体力あるとは正直思っていませんでした。
Y木さん、最終の新幹線間に合わなくても泣かないでね。

疲れきった仲間を乗せて出発したバスに大きく手を振りながら、今度はいつみんなに逢えるんだろうかと思ったらちょっと涙がでそうになった。さようなら。

さようなら。みんな。


さあ、T羽君、次のバスが来る時間までなにしようかね。いや、帰りのバス予約してなくて、さっきのバスに乗り切れなかったんだよね。


おしまい



こんな感じだよ、富士登山。途方もなくしんどいけれど、天気とメンバーに恵まれればきっといい思い出になるよ。登った人だけが見られる景色とか感じられる達成感は絶対にあるから。私は正直いってすごい楽しかったよ。な〜んていえるのは筋肉痛が納まってしばらく立ってからこの日記を書いているからだな。きっと。


買い物してして

こういうの好きかな