2003/12/09(火)カラスにエサを与えていた頃


あなたはカラス、好きですか?

ボクは小学校5年生の夏休み一ヶ月間だけ、カラスが好きだったことがあります。
当時の友人(今は生死すら知らない)宅のすぐ近くに、動物好きのおじさんが住んでいて、どっかで拾ってきた子犬やら元荒川で釣ってきた鯉やらをいろいろ飼っていた。別にあやしい人ではない。ボクも動物がむやみやたらに好きだったので、よく遊びにいって、餌をやらしてもらったりしていた。

いつものように友人と動物好きのおじさんのところにいくと、なにやら金網と材木で1m四方くらいの小屋をつくっている。なんだなんだ、今度はキツネかタヌキかアライグマかと制作中の小屋の中をとのぞき込むと、そこにはカラスが一羽飛び跳ねていた。カアカア。よくみるとそのカラスは右側の羽が折れている。おじさんに聞いてみると、犬の散歩をしていたら、側溝に向かって犬がワンワン吠えるので覗いてみると、そこにこの羽の折れたカラスがはまっていたので、おもわず拾ってきたそうだ。カアカア。

拾われたカラスは「クロ」というベタな名前をおじさんからいただき、小屋で飼われることとなった。

カラスなんて別にどうとも思っていなかったが、小屋に入ったカラスは結構かわいく、ボク達も一緒に育てる手伝いをさせてもらうことになった。カアカア。僕たちが受け持った仕事は、カラスの餌を捕ってくること。カラスの餌は、生ゴミの詰まったごみ袋ではなく、生きたカエルとかドジョウとかバッタ。

当時はそこら中が田んぼとコンクリート張りになっていないドブ川があったので、エサになる生き物は簡単に捕まえることができた。駄菓子屋で買った網を振り回してエサを10匹ばかり捕まえバケツにいれて、意気揚々とおじさんの元に戻ると、おじさんはクロに一生懸命「オ・ハ・ヨ・ウ」と話しかけていた。おじさんはどうやらクロに言葉を覚えさせたいらしい。気持ちはわかるけど。カアカア。

おじさんにバケツを差しだすと、おじさんはボクが捕まえた一番大きなトノサマガエル(正確にはトウキョウダルマガエルというらしい。)をクロの前にポイと投げた。固唾を呑んで見守る僕たち。クロは躊躇することなくカエルを太いクチバシでカブリと一気に食べてくれた。「お〜」と感動する僕たち。おじさんは僕たちにもエサやりをやらせてくれた。自分で捕まえたものを与えると、クロは喜んで食べた。カアカア。

夏休みだったこともあり、僕たちは毎日のようにせっせとクロにエサを与えつづけた。今まではなにかを捕まえて家に持って帰っても母親に文句を言われるだけだったのが、ここにもってくればクロがカエルでもドジョウでもオタマジャクシでもカマキリでもザリガニでもなんでも喜んで食べてくれる。子供心にこんなにうれしいことはない。クロは僕たちの顔を見ると「カアア(エサクレ)」と甘えた声で鳴くようになった。もうクロは家族の一員だ。っていうのは言い過ぎだが、クロに対して確実に情は移りまくっていた。カアカア。

夏休みももうすぐ終わる頃、いつものように友達とおじさんの家にいくと、クロの小屋が空っぽになっている。おじさんも留守のようだ。あれあれ逃げちゃったのか、あるいはネコにでも襲われたのかなと近所を探すがクロは見あたらない。しばらくしておじさんが帰ってきたが、なんだか落ち込んでいるように見える。覚悟を決めてクロのことを聞くと、クロはカギを器用にあけて小屋から脱走し、小屋から道路にでたところでクロネコヤマトのトラックにひかれて死んでしまったらしい。クロの亡骸を近くの空き地に埋めてきたそうだ。ある意味クロネコに襲われたんだなと思った。

僕たちはおじさんがクロを埋めた場所に連れていってもらい、近くに咲いていた季節はずれのタンポポをそっとおいた。ボクはクロが死んでとっても哀しかったけれど、夏休みが終わってから、クロのエサ捕りをどうしようかと悩んでいたので、ちょっと ホッとしていた。

まだカラスが生ゴミなんか漁らなくても生きていけた頃の話でした。

追記:
それ以来、カラスに対して悪いイメージはあまりなかったのだが、二年前の冬、買ったばかりのフードにファーがついたコートを着て街を歩いていたら、頭上の電線に止まっていたカラスに大量の糞を浴びせられて、コートと髪が白くなってしまったことがある。ウグイスの糞は髪を洗うのにいいらしいけどカラスじゃねえ。

それ以来カラスは嫌いです。

買い物してして

こういうの好きかな