5/4(水)山形県朝日村でバンジージャンプ

 

山形に来て三日目、なぜか今日は某自衛隊員の先導のもと、朝日村という伝説の怪魚が住んだり住まなかったりしているところにある、月山あさひ博物村にいくことになった。そこでのんびりと山ブドウを原料に作られた月山ワインの試飲をしたり、アマゾン自然館で珍しいカブトムシにドキドキするのだなと無理矢理自分を信じ込ませていく訳だよ。この月山あさひ博物村は、山形市内に住んでいた学生時代、鶴岡方面にいく際に必ず通っていた道沿いにあるので、彼が私になにをさせようとしているのか、本当の目的はなんなのかは察してはいるけれど、そんなものは認めない。ワイン飲んでカブトムシだ。

国道より。 まだ雪深い。

目的地にどんよりとした気分で到着。とてもいい笑顔の某自衛官に「予約してありますから。さあさあさあ。」と進められた先には、学生時代見ないようにしていた吊り橋があり、その真ん中からは人間ヨーヨーがブランブランとぶら下がっている。ああ、やっぱりバンジージャンプですか。ええ、そうだとは思っていました。じゃあ、がんばります。

ああ、なんかやっているよ。 ああ、飛んでいるよ。なぜ飛ぶかな。

まあ生きていくっていう事は、毎日が橋の上から谷底へ飛び込むような危険と隣り合わせなんだから、バンジーはまだロープがあるだけマシだよねと自分を騙し、青息吐息で受付へレッツゴー。まず「死んだらごめんね」みたいな誓約書に泣きながら署名をしてバンジー代を払う。バンジーしているところの記念写真を強く進められるが、今回は心のシャッターだけに留めておく。続けて「隠さないで下さい!」と書かれた体重計で、「ほら、このジーパン、実は5キロあるから!」とか誰も聞いちゃいないのに無駄な言い訳をしながら体重測定。なんでも体重によってゴムの長さを調整するそうだ。で、そのゴムは受付に展示してあり、細い糸状のゴムを束ねて作ったものらしくなかなか丈夫そう。いや、丈夫そうじゃないと困るけれど。これなら、まあ、きっと、大丈夫だと信じよう。うん。死んだら死んだということで。ちなみに安全に谷底に落ちるのにかかる料金は5,775円と結構な額。朝日村の吊り橋から飛び降りる代金は、清水の舞台から飛び降りる気持ちで支払わないといけないのだ。

体重を隠してはいけないらしい。 ゴム。がんばってくれたまえ。

体重が40Kg以上。上限は、ないらしい。 突然ですが「olahina(おらほな)」。売店で売ってます。買ってください。美味しいから。

ジャンプチケットと右手の甲に、油性マジックで受付番号、体重を書いてもらったら受付は終了。今度は怪しげなおっさんがニヤニヤとやってきてバンジージャンプの飛び方レクチャーを始める。バンジーへの道のりは長いのだ。

体重と番号。体重はモザイクで隠す。思春期だから。 ジャンプチケット。
  • ポケットの中のものを全部出す。
  • 靴のひもをしっかりと締める。
  • 前から飛ぶか、後ろから飛ぶか決める。
  • 覚悟を決める。
以上の言葉を胸に秘め、恐怖でクスクスと笑う膝を押さえながら一歩一歩と前進し、吊り橋の中心にあるジャンプ台に残念ながら無事到着。ここで念のためもう一度体重測定。ちなみにこの吊り橋の名前は「ふれあい橋」という。この状態でなにとふれあえと。恐怖とか。

まずは先に「先立つ不孝をお許しください」とうれしそうに志願した某自衛隊員から飛んでいただく。橋の外にある二畳ほどのスペースで、足にしっかりとロープをくくり付け、手すりの取っ払われたところに立ち周囲に手を振る自衛官。ああ、なんかすげえ楽しそう。そして係員の「5、4、3、2、1、バンジー!」という元気なかけ声にあわせて躊躇なく前のめりに倒れ込み、私の視界から消えていってしまった。ああ、これを私が次にやるのね。まあ、最終的にやると決めたのは私だしね。ああ、やってみせるさ。

フレンドリーな係員がニコニコしながら、さあどうぞあなたの番が来たのですさあさあさあというので、数分前に自衛官が身を投げた、吊り橋から少し出っ張ったジャンプ台へと降りる。ああ、もうこれだけで十分怖い。この台、吊り橋と1メートルしか離れていない場所だけれど、吊り橋はあくまで渡るところ、ここは自分から飛び降りるところと場所の意味合いが全然違う。もうここは、前を向いても左右を見ても谷底のジャンプ台。選択肢は真っ逆さまに飛び降りるのみ。高さは34メートル。天気は強風、谷底は豊富な雪解け水で激流だい。イエイ。

怖いっちゅうの。

ジャンプ台にあるイスに腰掛け、係員に罪人の如く両足をきつく縛っていただく。ゴムの長さを調節する際、床屋で「もみあげどうしますか?」と聞かれるが如く、「水にどこまで浸かりますか?」と当然のように聞いてくる。いや、浸からないでいいです。今日のところは許してください。二度目はきっとありませんが。

そんなこんなで飛び込み台の踏切板の上へと移動。両足が結ばれてしまっているのでペンギンのような歩き方で大変おっかない。あわわわ、柵のない地上34メートルってここまでクラクラするものなのね。ぴょこぴょこぴょこと、どうにかこうにか先っぽまでいったところで、係員がにこやかにとんでもない事をいいやがる。

「じゃあ、つま先を出して手を上に上げて下さい!」

ちょっとまて。ジャンプ台からつま先を出したら、風が吹いただけで落ちる自信があるぞ。しかも、手を上にあげたらバランスがとれないじゃん。でもまあ、ここで落ちたところで、「落ちた」か「落ちる」かの違いだけでどうせ水面まで一直線だ。意を決してニジリニジリとミリ単位の歩みで前に進む。なんか棒倒しの棒になった気分。あぁ、つま先の下になにもないよう。もう逃げ道なし、「バンジー窮す」とはよくいったものだ。

「はい、左右のギャラリーに手を振って下さいね!」

・・・。この状態で手を振れと。ああ、降るさ。もうなんでもいいさ。ギクシャクギクシャク手を振るさ。

「では、いきますよ。5、4、3、2、1、バンジーで前に倒れてください。」

は、はい。そうなんだよね。自分で倒れないといけないんだよね。背中は誰も押してくれないのよね。

「はい、5、4、3、2、1、バンジー!!」

ああ、どうしよ、やめようかな、でもここでやめたらヘタレ扱いされるしな、まあ、ちょっと倒れるだけだ、いってしまえ。えーい。(この間0.2秒)

うわああああああああああああああああああああああああああああはやいはやいはやいぶつかるぶつかるぶつかるうわもどったもどったビィヨーンてもどったまたおちたおちたまたビィヨーンてもどったうわあからだがどっちむいているのかちっともわからんちんビィヨーンビヨーンビィヨーン。

ふう。バンジージャンプ、ある程度体が傾いてしまえば、もう自分でどうのこうのできる世界ではないな。ただただ地球の重力とゴムの張力を行き来するのみっすよ。ビィヨーンビィヨーンっすよ。飛び込んだ後、体が一番低いところにきたときに、ゴムが結ばれた足に衝撃がくるかなと思っていたけれど、見事なまでに衝撃がなくてビックリ。いいゴムだ。欲しい。「ゆーとぴあ」のコントにぴったり。

ビィヨーンの反動が終わった頃に、上流から回収用のゴムボートがやってきて、乗組員伸ばす竹竿に捕まって無事回収される。いやあ、バンジージャンプ、なんか終わってみればすっごい貴重な体験をしたような気がしなくもない。いや、楽しい。またやりたい。次はもうちょっと落ち着いて楽しめるような気がする。人生で一回やればいいかなと思っていたけれど、もう回数券とか欲しい。そのくらい楽しい。いや、そんな金はないのだが。

無駄に興奮したままボートから上がって受付に戻り、認定証とやらをいただく。別に履歴書にかける資格ではないが素直にうれしい。なくしちゃったけれど。ちなみに今年300人目のジャンパーでございました。「キリ番ですね。」といわれたけれど、特にプレゼントはナシ。まあいいさ。

認定証もらった。

いやあ、予想に反して楽しんでしまった。来年にでもまたこようかな。次はウォータータッチにチャレンジだ。本当か俺。


つづく


第二回バンジーはこっち

買い物してして

こういうの好きかな